コラム

イラスト:鈴木ハルナ


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PostHeaderIcon 相談員コラム…貸金庫は宝箱②


 私が貸金庫を勧める一番の理由は、何かあった時に身軽に逃げるためだ。地震、津波、台風、水害、噴火、火事の時に最も大切なのは命だ。それは自分自身だったり、家族だったり、ペットだったりする。そう頭ではわかっていても、パニックの時に何をするかわからないのが人間。

 実は私は小6の時に火事にあっている。その時、手にして逃げたのは犬(太郎という名前の雑種)と位牌とランドセルだった。直後は凄くうまくやったと思ったが、今にして思えば位牌とランドセルは後でなんとでもなっただろう。そんな物に命をかけてはならないと今なら思う。でもいざ逃げるという時、私は絶対欲がでてしまう人間だ。だから後顧の憂い無く、猫をかごに押し込み一目散に逃げるために、無くなったら困る物、失って泣いてしまう物を貸金庫に入れておくのである。

 では、無くなったら困る物、失って泣いてしまうってなんだろう。貸金庫は究極のプライベートの小さな空間なので、皆さんが何を入れているかはわからないが、たぶん一昔前とは中身がだいぶ変わっているだろうという想像はつく。一昔前は実印、株券、土地の権利書、手形や小切手、保険証書、契約書など紙物がメインだった。今はいろんな物がデジタル化され様変わりしている。

 株券は“ほふり”になって株券は無くなったし、あんなにビビった手形も電子取引されている。 基本的に保険証書など証書類はデータ化されているので、無くなってもどうにかなるのである(手続きは面倒だが…)。また、重要書類ナンバーワンの「不動産の権利書」も廃止され徐々に目隠しシールの貼られた「登記識別情報通知書」になった。もちろん大切な物だが、昔の権利書とは重要性の格が違う。というわけで、昔のまま変わらないのは実印ぐらいだ。

 逆にデジタル化したが故に金庫に入れておきたい物もある。それは、ネットバンク、ネット証券などの証書や暗証番号。パソコンの中の重要データのバックアップ。もちろん今時はクラウドに保存するという手もあるが、本人しかわからないデータの保管場所が本人しかわからないというジレンマがある。私が昔人間なのかもしれないが、データやネットという形のない物もUSBメモリやCDDVDなど形のある物に保存しておくと安心なのだ。とにかく貸金庫なら存在さえ知らせておけば自分が万が一の場合も忘れ去られることはない。

 銀行が行った貸金庫のアンケートによると、個人利用で最近入れられるのは貴金属や思い出の品が多いそうだ。貴金属は宝飾品だけでなく、私もお勧めしている金やプラチナのバーなども含まれる。分散投資やインフレ対策で資産の一部を貴金属で持つことはいいことなのだが、問題は盗難や紛失が怖い。だから貸金庫に保管するのである。重さ制限もあるので、大量には保管できないが、100g程度のバー数本なら大丈夫。これは本当に何もかも失ったときに生活を再建させるための原資になると思えば、たまに開けて、貴金属のキラキラを見るとほっこりする。

 そしてぜひ貸金庫に入れて欲しいのが、写真データだ。昔「岸辺のアルバム」という家庭崩壊がテーマの名作ドラマがあった。そのドラマの最後で、多摩川が決壊して思い出のマイホームが流されてしまうのだが、その時必至でアルバムを持ち出すというシーンがあった。アルバムが家族再生のアイコンだったのだ。私も親を見送ったばかりなので、昔の写真はいいなあという思いが強い。写真は無くなったら泣いちゃう物の1つだ。アルバムはさすがにかさばるが、いまなら写真はみんなデータなので、CDなど保存媒体にコピーすれば何百枚でもコンパクトに保存できる。

 というわけで、個人利用の場合、貸金庫の狭いスペースに入れる物は実印、重要書類(登記識別情報通知書、保険証書、遺言書など)、貴金属、パソコンの重要データ(ネット上の個人情報、住所録、作成した文書類、写真など)、いつも使う通帳やカード、免許証などのコピー、思い出の小さな品(私は息子のへその緒を入れてある。)などである。もし明日、大災害に遭っても、命さえ助かれば、生活を取り戻すことができる自信の源泉である。

 あまり頻繁に開け閉めする物ではないので、ある人は「資産のタイムカプセル」とうまいことを言っていたが、小さな貸金庫は間違いなくその人の厳選したお宝箱だ。それを月額10002000円程度で厳重に保管してくれる。結構ありがたい。

 次に貸金庫の注意点を2つ。直近でかりた金融機関から「生物(イキモノでなくナマモノ)と現金は入れないでください」ということを最初に言われた。ナマモノはともかく、現金を入れるなといわれたのは初めてだった。マイナス金利やマイナンバーでタンス預金が増えていると言われるが、実際はタンスではなく貸金庫なのでこんな規制ができたのか。
 でも、何を入れるか銀行はチェックしないし、大金入れて紛失してもこちらは知りませんという事なのだろう。いざという時のお金や葬儀代程度の現金を入れて置きたいものが、自己責任が前提だ。

 もうひとつ「税務調査」であるが、なぜか貸金庫は調べられないと信じている人がいるので要注意だ。貸金庫の有無なんて金融機関に税務調査が入ればすぐわかるし、必ず税務署にチェックされる。会社でも個人でも「お宝箱」なのだから当たり前なのだが、貸金庫はやましいものの隠し場所ではない。つまり貸金庫は隠し金庫ではないのだ。

 最後に最近、高齢の親御さんの介護問題のFP相談が多い。介護がそろそろ必要かなという初期段階の壁は「他人を入れたくない」という親の抵抗だ。介護とは他人のお世話になると言うことで、介護度が進めば進ほど頼る人は増えていく。でも「他人を入れたくない」心を詳しく見ると「自宅を見られたくない」という恥の気持ちと「大事な物を取られる」という猜疑心がある。

 散らかった部屋を見られたくないというのは、実際、掃除や片付けをしてもらい快適になれば納得するようだが、問題は猜疑心対策。わたしはこんな時「貸金庫」を提案する。「大事な物は貸金庫に預けておけば他人が自宅に出入りしても大丈夫だよ」と説得するよう勧める。

 実際、高齢者が貸金庫を借りる効用は他にもある。まずは大事な物が明確になり保管場所が特定されること(親が亡くなり大事な物の保管場所がわからないことは本当に多い)。また介護がはじまると子供など誰かがマネージメントすることになるが、親が貸金庫を借りて、マネージメントする子供だけでなく、他の子供も全員代理人にしておけば、親の介護を「貸金庫」というアイテムで共有化できる。一歩進めて「遺言書」や「エンディングノート」も入れておけばなお安心だ。

 貸金庫ってうまく使うととっても便利な物だ。とくに高齢者と貸金庫は親和性が強いと思う。別にイヤならやめれば良いのだから、一度トライしてみてはどうでしょう。

※前の記事は左の「相談員のコラム」で読めます。