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イラスト:鈴木ハルナ


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PostHeaderIcon 相談員コラム…ファイナンシャルプランナーのやせ我慢

 
 FP(ファイナンシャルプランナー)の事が世間に少しは認知されるようになって、資格試験の応募者も増えているようだ。それは良いことなのだが、残念ながらFPと言う仕事の未来は明るいかというと私の場合はかなり疑問だ。今回は決して体はやせてはいないが、やせ我慢でFPを続ける私のお話。

 FPといっても実際は企業に勤めるFP(保険会社、銀行、信用金庫、証券会社、会社の総務など)が多く、CFPや一級FPなどの上級資格を取ると毎月資格手当がもらえるようだ。一方、私の様にどこにも属さない独立系FPは本当に大変だ。ある人が「FPはフリーだとプアーだからFPだ。」とうまいことを言っていたが、独立系FPの収入源は相談料、講演料、原稿料、そして手数料だ。

 もちろん、講演で1回数十万円稼げる程に名の知れたFPはほんの一握りで、原稿料といっても雑誌の依頼は雀の涙程度だし、実際本を出すのも大変だ。私も前に某有名出版社から「電子出版された本『老後の住まい』を読んだ。とてもすばらしいので一度お会いしたい。」というメールをいただいた。「これは執筆依頼だ」というので勇んで担当者に会いに行ったのだが、どうも煮え切らない。原稿料は初版の場合5%~10%ぐらいで、売れる確証がないとなかなか出せないという。要は著者買い取りをして欲しいという事だったのか良くわからないまま話は立ち消えとなった。

 もちろん紙の著作があればFPとしてうれしいが、私の場合は電子書籍でも読まれているし、著者買い取りしてまで出版するメリットを感じない。ただ広告費と割り切る「本を出したい」という人は多く、有名人や経営者の本はゴーストライターが書き、著者買い取りするようだ。これは形を変えた自費出版で出版社の究極リスク回避だが「なるほど面白くない本が多いわけだ、出版不況も当たり前だ」としか思えなかった。

 そんなわけで、独立系FPの収入は相談料と手数料になる。手数料というのは金融商品を売る仲介手数料であるが、代表的なのは保険である。独立系FPで保険商品を扱い、その仲介手数料がメイン収入という人は実に多い。一件あたり成約すると数万円になるので、自営FPには魅力的だ。実際に私にも保険代理店をやらないかというお誘いも多い。ただ保険相談を受けて、保険を売るというのはやっぱりFPと相談者の「利益相反」だと私は思うのだ。私は保険会社からのインセンティブ(報酬)がないので、「そもそも保険に入らない」「今の保険を解約する」「職場の安い団体保険に入る」「共済にする」などの選択肢も勧めることができるが、もし売ればお金が入るという状況で、相談者に良いと思ってもそれらを勧められるか自信がない。

 というので、FPの仕事の収入の王道は相談料なのだと思う。しかし、その相談というのが悩ましい。世の中に「お金の無料相談」があふれているからである。そもそもお金の無料相談というのは、みんな商品を売る側の相談窓口である。最近は無料なだけでなく、数千円の商品券なんかをプレゼントする所すらある。保険なら保険会社や「保険の窓口」などの代理店、ネットの比較サイトだって契約すれば保険会社からインセンティブ(報酬)が支払われる一種の代理店だ。株や投信の相談も手数料収入の証券会社の窓口だけでなく、銀行や郵便局にも無料相談の窓口があり、大手市中銀行系列のM証券などはテレビCMをバンバン流している。

 売る側が商品を勧めるのは当たり前だし、「相談」が1つの販売ルートで、一概に手数料ビジネスが悪いわけでもない。ただ「顧客の笑顔のため」「公平中立」なんてきれい事をいいながら、手数料で稼いでいることを隠すのはやっぱり良くないし、手数料は結局、保険料に上乗せされるので消費者の利益にならない。しかも当たり前なのだが、相談される側は専門知識を学び、情報に接し、仕事として毎日それに関わるわけで、初めて相談する消費者との知識の格差は大きい。ニコニコしながら専門用語で勧められるととても太刀打ちできない。初めて保険や投信に接する消費者はわからなくて当然なのだから、「わからないものは買えない」と言える人だけがいくべきだ。でもこんなに無料相談が林立すると、なかなか有料でお金の相談しようとする人は少ないので独立系FPの仕事は大変なのだ。

 それでも私は手数料ビジネスには手を染めず、副業(区立保育園の保育補助)をしながらでも、独立FPで相談業務を続けて行こうと思う。無料相談では絶対できない、きめ細やかな個別対応の本当の意味で相談者の側に立った「相談料払っても相談してよかった」と言ってもらえるFPでありたいと思っている。

 FP相談はお金のこんがらがった問題を整理し相談者と解決の糸口を探す仕事だ。解決するのはあくまで本人なのだが、アドバイスがあれば解決できることは本当に多い。一口にFP相談といっても軽い相談もあれば、人の生死に関するようなディープな相談もある。今までFPになって7年ほどになるが、誰にも相談できないで「よくぞ見ず知らずの私に相談してくれた」と思えるようなFP冥利に尽きる相談が何件かある。相談料をいただき最善を尽くすのは当たり前だが、こんな案件を解決でき「ありがとう」といわれると本当にうれしい。だからやせ我慢しながら続けていこうと思う。 

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