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PostHeaderIcon 相談員コラム…「確定年金」は本当に「年金」の名に値するのか


 この頃、しばしば耳にするのが保険会社の保険が何の保険か良くわからないという相談。例えば「終身保険と終身年金の違いは何ですか?」という質問が実際にあった。終身保険というのは終身(一生)つづく生命保険(死んだら保険金が支給される保険)のこと。一方、終身年金は終身(一生、生きている間)ずっと支給される年金をもらえる保険のこと。この2つの名前は似ているが全くの別物なのだ。

 特にこの「年金」が付く保険への誤解が実に多い。そもそも年金を辞書で引くと「毎年決まって支給される一定額のお金」とある。ほとんどの人は年金と言えば決まったお金が決まった時に通帳に振り込まれる国民年金や厚生年金のイメージだ。

 しかし! 保険会社の「年金」には、個人、確定、終身、変額、10年保障、利差配当付き、外貨建てなどいろんな言葉がくっつく。個人というのは公的年金や企業年金と区別するために自分で選んで個人で任意加入する民間保険であるという意味。問題なのは確定と終身で、あとの言葉は運用方法や支給方法にすぎない。

 中にはFPの私ですら、良くわからない商品もある。でも、安心して欲しい。わからない、理解できないのが当たり前なのだ。保険会社のネーミングにはわざと短くしたりわからなくする工夫が満ちあふれ、素人の勘違いやイメージを利用しようとする悪意すら感じる。

 民間の保険会社の年金保険は大きく分けて2種類「確定年金」と「終身年金」である。確定年金は積み立てた保険料と運用益を高齢(6070歳)になったら決まった期間(10年がほとんど)で受け取るもので、期間が確定しているので確定年金。終身年金は生きている間ずっと支給される年金で公的年金と似ている。

 そして終身年金は、加入者が長寿になったため保険会社にとって重荷になったのと、マイナス金利で予定利率がほとんど見込めないため取り扱いはドンドンなくなり、いまや個人年金保険といえばほとんどが確定年金なのである。ウソだと思ったらネットで個人年金保険と検索してほしい。出てくるのは確定年金一色だ。

 大体、積み立てたお金を10年に分割して支給する保険に「年金」という言葉を使っていいのだろうか。「毎年決まって支給される一定額のお金」だから問題ないというのだろうが、高齢者のそれも初期の10年しか支給されないのに「年金」はないだろうと私は思う。

 また、何のための保険かを考えればかなり限定した使い道しか思いつかない。60歳からの再雇用で収入が減り、公的年金が満額出るまでの家計を補填する「つなぎ資金」、もしくは活動期の老後の旅行や趣味のための余暇資金などだ。でもたぶん消費者がほしいのは公的年金の足りない分をずっと補填する年金で、それは終身年金でなければならない。

 元気な60歳から70歳の年金保険なんて、FPの私が考える長い老後の家計を支える年金というイメージとはかけ離れた商品だ。70歳になっていよいよ病院通いも増え、生活が不安になる頃に支給が終わる商品が「年金」という名で売られていることに私は釈然としない。誰も問題にしないし、金融庁の指導もないようだが、明らかに公的年金のイメージを利用する商品だと思う。

 この商品の中身は「10年分割支払い養老保険」なのである(養老保険というのは死んだら死亡保険金が出るだけでなく、満期が来たら生きていていても保険金が支払われる保険)。それが「確定年金」と言われると、何が確定しているのかわからず「決まった額がずっと支払われる年金なんだ」という誤解が生まれる。この「確定年金」というネーミングは「誤解する人だけが無知で悪い」とは私にはどうしても思えないのだ。

 数年前に投資信託の分配金でも同じような話があった。「普通分配金」と「特別分配金」というネーミングが「普通分配金」と「元本払戻金」という名称にするよう行政から指導が入り変更された。毎月分配金が通帳に自動的に入るので、高齢者をメインに毎月分配型投信が爆発的に売れた。でも、その分配金の中身は投信のもうけから出る「普通分配金」と元本を取り崩して拠出する「特別分配金」で、運用成績が良いときは「普通分配金」から、悪いときは「特別分配金」から出されていた。

 だから特別分配金が支払われるとその分元本が目減りする。でも実際「特別」といわれ「ボーナスか」と自分の良いように考える人もいて、金融庁から素人が勘違いすると指導が入ったのだ。

 金融商品は投信でも保険でも、当たり前だが消費者と販売会社との知識の差は大きい。でも素人だからと相手の勘違いを利用する商売は絶対よくない。「確定年金」は保険会社のとって大きなマーケットだからこそ、素人が勘違いしないネーミングをしてほしいのだ。

 「確定年金」への違和感は昔からずっとあり、この記事を書いていて「とうとう保険会社にケンカ売っちゃった」とちょっとドキドキしている。所詮、私のような無名の個人の意見なんてごまめの歯ぎしり。でも保険商品を扱っていない(保険会社のインセンティブ=仲介手数料をあてにしない)FPなので言っちゃいました。

※前の記事は左の「相談員のコラム」で読めます。