コラム

イラスト:鈴木ハルナ


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PostHeaderIcon 相談員コラム…連ドラ「ひよっこ」を見て、他人との暮らしを考える ①


 時間が自由なフリーランスには、ちょっとした楽しみとして「朝の連ドラ」がある。私も勤め人の頃は縁のなかった世界であったが、自宅での仕事になってからつれあいと共にすっかり常連さんになった。たまに大外れのつまらないのもあるが、朝の習慣でついつい見てしまう。そして今放映中なのが、もうすぐ終わる昭和感満載の「ひよっこ」。視聴率も20%越えで評判もいい。その中で私がすごく気になるのが主人公の「住まいや暮らし方」だ。

 まず奥茨城の実家(農家)から集団就職して工場の敷地内の寮(6人一部屋の雑魚寝で賄い付き)に住む。その後、工場が倒産して洋食屋さんで働く事になり、隣の下宿(ちなみに大家さんと同居だったり、台所や風呂、トイレなど共用部があるのが下宿、完全独立なのがアパート、賃料は下宿が安くアパートは高い。)を紹介される。四畳半に押し入れの付いた2Fの個室、トイレ、炊事場は共同でお風呂は寮の時も下宿の時も銭湯のようだ。

 そして、その下宿にいろんな住人が住んでいる。共有スペースが多いので自然と挨拶を交わし顔見知りになる。しかも、外からいろんな人がやってきて短期や長期の居候(ちなみに生活費を払わないのが居候、生活費を折半するのが同居人)になる。例えば茨城のおじさんがビートルズのコンサートのために来たり、女優を目指す親友が住む場所がなく転がり込んだり、行方不明だった父親が一時同居したり、人を匿ったりと主人公の4畳半の部屋はほぼ2人暮らしが続く。

 親友との共同生活は2人分の布団を敷くスペースと折りたたみの小さなテーブルが各自あってその上にランプと小さな鏡、本が数冊あって書き物ができるスペースがある。洋服は普段使いは鴨居にハンガーでつるし、その他はたぶん段ボールに詰めて半畳の押し入れに入れてあるのだろう。

 狭いし、壁は薄いし、届いたはがきは読まれるし、電話は取り次ぎ、立ち聞きがメチャメチャ多く、プライバシーはほぼない。うまく行くときはいいが、関係が悪くなるととてもいられたものではない。主人公と分かれた恋人もすぐに出て行った。来るもの拒ます、去る者追わずの前提の上に人間関係が成り立っている。

 もちろんドラマなので日常ではあまりない大勢の食事シーンが多く、しょせん作り事なのだが、「ちゅらさん」のアパートの時のような現実感のない理想郷的共同生活と違って、私にはすごくリアルな感じがする。なぜなら私が初めて予備校に行くために一人暮らしをした下宿がこんな感じだったからだ。

 四畳半一間に半畳の押し入れ、小さな台所が付いて出窓がある2階の西日のあたる部屋だった。トイレとお風呂、広い物干し台は共用。住んでる人も隣は水商売風の気の良いおばさん、その隣は料理が上手で気っ風の良い会社員、下にはのんびりした農家出身の大学生、それに大家さんの友人で管理人もしていた元おでんやさん(静岡おでん)のおばあちゃんと多彩だった。野菜をもらったり、おでんの作り方教えてもらったり、ごはんをごちそうになったり世話になった。

 その中でも一番の友達になったのが、准看護師をしていた同じ階の住人だ。中卒で准看護師になり歯科医院で働きながら、看護師を目指して夜間高校に通っていた女性だ。親がかりで予備校に通う私にとってはちょっと引け目があり、自活してバリバリ働く彼女がすごく大人に見えて、すぐに友達になった。

 お互い自炊なのでごはんを一緒に食べたり、勤めていた歯医者さんに特別待遇で診察してもらっていたり、何より社会人のイロハを教えてもらった。私は数学が苦手な彼女の勉強に付き合ったり、時間に融通がきくのでごはんを作ったりした程度で、年下だったせいもあり世話になりっぱなしだった。

 私は良くシェアハウスの記事を好意的に書くが、人生の中で「他人と暮らしたことがある経験」といのは何より得がたいものだと思っている。他人から教わることも多いし、家族や友人でない人との関わり方や距離の取り方が身をもって経験できる。もちろん現実にはいい人ばかりでなく、よろしくない隣人もいるわけだが、そうした面倒な人と関わらない方法や逃げ方も学べる訳だ。

 昔は“ひよっこ”のミネコや私のように経済的理由で寮や安下宿に住まざるを得なかったが、いまは「あえて」しないと他人との同居は望めない。それが「シェアハウス」や「コレクティブハウス」(興味にある人は検索してね)かなと思う。

 この「他人と暮らしたことがある経験」が生かせる機会は2度ある。ひとつは結婚(別に勧めてるわけではありませんが)で、もうひとつは老後だ。結婚にたどり着くまでには「家族と暮らす」→「ひとり暮らし」→「結婚」、もしくは「家族と暮らす」→「結婚」という流れが多いが、実はいきなり他人と暮らす=結婚生活というのは結構ハードルが高い。

 老後もいよいよ介護が必要になるとデイサービスに行ったり、施設に入居したりする事になる。このとき「家にいたい」と強く言われるが、これの中身は「家が良い」というより「他人と一緒」が嫌なことが多い。
 もし「他人と楽しく暮らした経験」があれば、結婚も老後も違ったものになるだろうと思う。次回はそのへんをもう少し詳しく書きます。


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