コラム

イラスト:鈴木ハルナ


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PostHeaderIcon 相談員コラム… お小遣い制の不条理①


 FP相談の申し込みをいただくと必ずお聞きするのが「私でいいですか?」という質問。折角申し込みしたのになんてこと聞くんだと思われるかもしれないが、お金をいただく有料相談であまり考え方が違う人間に相談しても無駄になると思うからだ。お金の考え方というのはその人の生き方の発露だ。FPに相談すれば当然そのFP個人のお金の考え方が反映される答えが返ってくる。このコラムもそうした私のお金への考え方をわかっていただきたくて書いている。

 例えば老後資金が不安な人へ「物価の安い田舎に引っ越して生活費を減らせば大丈夫ですよ」という提案をするFPが実際いる。私は田舎暮らししたいと相談されれば「自己実現での田舎暮らしはいいけど、自動車が運転できなくなると田舎暮らしは厳しいですよ。どうしてもしたいなら撤退する金銭的余力をもってのぞんでください。意外に田舎暮らしはお金かかりますよ。」と言う。

 どちらが正しいということでなく、どっちがしっくりくるかということだ。こんなケースはままある。そして最近いただいて困ったのが「家計の中で、もう削れるのは夫の小遣いしかない。説得材料が欲しい。」という相談だ。今回はこの件のついて書く。

 まず最初に言って置きたいのだが、私はこのお小遣い制がどうしても好きになれない。何故かというと、もし私が外で働いて稼ぎ、夫が専業主夫で家計管理し「はい今月分のお小遣い」と夫からお金を渡されたら「ふざけるな!」と絶対思うからだ。

 そもそも「お小遣い」というのは辞書をひくと「保護者など(この時点でアウト! 配偶者は保護者ではない。)から自由に使ってよい(なんて偉そうな!)ものとして与えられる(稼いだのは自分なのに)少額の手元の金銭で、それに丁寧語の『お』をつけた形」である。いくら「お」をつけても、子供ならいざ知らず、大の大人でしかも家計費を稼ぐ人にお小遣いはあまりにも失礼な言い方だと思うのだ。みんな無神経にこの言葉を使うのが不思議だ。ただ、この不条理に薄々気づいて、静かにフェードアウトしているなあと思わせるのが若い男性たちだ。

 いろんな家計調査などによると夫の小遣いの平均は34万円ぐらい。FP的には収入の1割を越えると多すぎると言われる。手取り30万円で3万円、40万円で4万円。内訳は昼食代、飲み会、交際費、趣味などである。要は昼食代+自由なお金。多いか少ないかというのは立場で変わるが、男性独身者のほとんどの人が「少ない!」と思うだろう。自活していても諸々の家計費の残りが全部自由なお金、もし実家暮らしなら生活費を入れても給与のほとんどは自分のものだ。

 妻から毎月3万円をもらい、昼食代でほぼ半分(1700円×21日=14,700円)、残り15,000円が純粋な自由にお金だ。ちょっと飲み会が続いて足りないと「悪いけど出して」と不機嫌な妻に頭を下げる。妻だって「私だって自分のもの買わないで家計費きりつめてるのに、飲み会! はあ-」となる。これじゃあ結婚なんてしたくなくなるのも頷ける。

 なんでこんなに不公平感満載の不機嫌家族になるのか? そもそも結婚は一種のシェア生活。経済の原理では1人より2人の方が“規模の経済”が働き1人当たりの生活費は下がるし、家事も軽減されるはずだ。つまりワンルームを2つ借りるより、1LDKに2人で済んだ方が全体の家賃は安いし、食費も材料費は増えるが2人分を作るのも手間はそんなに変わらない。洗濯もたたむ手間は増えるが洗濯機を回すのに1人分も2人分も変わらない。

 生活費や家事負担が減れば生活は楽になるはずなのにどうして家族が不機嫌になるのか。それは消費生活を支える収入を得る仕事と家事労働のバランスに夫婦ともども納得していないからだと思う。「お小遣い制」と対極をなすのが「ワンオペ家事・育児」。お小遣い制が働いてお金を稼ぐ人に対して失礼であるように、ワンオペ家事・育児も終わりのない究極のブラック労働になりかねない。 

 考えてみれば専業主婦でも共稼ぎでも主たる稼ぎ手が家計の主導権を握るのが当たり前だ。欧米では夫が家計管理する家庭が多く、妻が働きに出る一番の動機は「自由になるお金がほしいから」と言われる。専業主婦が家計を管理するのは世界では日本や台湾、韓国などイレギュラーのことらしい。専業主婦や扶養内で働く準専業主婦が成り立ったのはお財布が握れたからとも言われる。財布を握れれば「ウチの大蔵省」などと言われ家庭内で発言権もあり、その中からこっそり自分のお金を貯めることもできる。これがいわゆる「へそくり」だ。ただ、そのバーター取引として引き受けたのが一切の家事労働を1人でする「ワンオペ家事・育児」なのだ。

 かくのごとく「お小遣い制」の根っこ、意外に根深く家庭に浸透している。次回はお小遣い制をやめるための家計管理方法を、前回も紹介した「逃げ恥にみる結婚の経済学」を参考に考えたい。 

 

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