低くなった借金のハードル
お金の世界でこの20年すごく変わったなあと思うのは、借金に対する意識です。
もちろん、家など大きな物はローンという借金をしなければ手に入らないし、商売上の借入金は別として
個人が買い物や生活のために少額のお金を借りるのは後ろめたいこと、できればしたくないことでした。
お金を貸す側、特に高利貸しに対しては多くの人が侮蔑的感情すら抱いていました。
それがサラリーマン金融、消費者金融と名前が変わり、テレビCMがどんどん流れるようになると
一気に借金に対する気持ちのハードルが低くなり「いつでも誰でも」できることになりました。
とうとう窓口に行かなくても、無人で金を貸す機械も現われ、普通の人が気楽に利用することで、
返せなくなる人も急増し、多重債務や借金苦による自殺が社会問題となりました。
この数年、多くの人の働きかけで貸金業の規制は強化され、とうとうグレーゾーンと言われる金利が規制され
金利20%が上限とされました。この10年で貸金業は3万件から5千件と激減し、今や過払い金の支払いで
大手も倒産。そういえば駅前の派手な看板がいつの間にかなくなっています。
しかし、気持ちのハードルは低くなったままです。今や銀行が「キャッシング」「カードローン」と名前を変えて
キャンペーンやポイントのデコレーションでまるで、「利用しないと損ですよ」言わんばかりに広告しています。
どんなに魅力的でもそれらは高利の借金です。借金に対して抵抗感がないまま、ちょっと借りるくせがつき、
銀行のカードローンで借りられなくなり、違法な闇金に手を出すケースも多いようです。
年間3万人の自殺者の多くが借金苦であるということをもう一度考えたいですね。
保証人と連帯保証人は大違い
親しい人から「絶対迷惑かけないから、借金の保証人になって」と言われたらどうしますか?
気の毒だからとつい実印を押してしまう。ありがちな話ですが要注意!
普通の人は「保証人とは本人が借金を返せなくなったら返済する人」という理解です。
しかし、お金を貸す側が求めるのはほとんどの場合「連帯保証人」です。
保証人と連帯保証人の違いなんて学校でも家庭でも誰も教えてくれません。でもこの2つは全く違うます。
連帯保証人は借金した本人と同じ責任があります。
借金をする本人も連帯保証人もその違いをよく知らず、もちろん貸す側は親切に教えてくれません。
保証人は返済を迫られたら「本人に言ってよ」といえます。(催告の抗弁権)
でも、連帯保証人は言えません。どんな事情があろうが返済しなくれはなりません。
返済できなければ、財産や家も差し押さえられます。貸す側からみたら、本人でも連帯保証人でも
取りやすい方から取るのです。連帯保証人を頼まれたら、その借金を背負う覚悟がなかったら断わりましょう。
注意しなければいけないのは、相続の場合。人のいい父親が友人の借金の連帯保証をしていた場合などです。
相続というのはプラスの財産と借金などのマイナスの財産の両方を引き継ぐこと。
連帯保証はマイナスの財産なのです。死んだからといってまぬがれません。
知らずに相続して多額の返済を求められることもあります。
相続時に知っていれば、借金の方が多いときは「放棄」の手続きをすれば、相続は最初から
なかったものとして、プラスの財産もあきらめなくてはいけませんが、借金の返済をまぬがれます。
このように連帯保証は貸す側に圧倒的に有利な連座制度です。日本では当たり前ですが、
外国にはこんな制度はありません。アメリカでは州法で「封建制時代の残滓である」と禁じている所もあります。
一日の早くこのような人を追い詰める非民主的制度をやめたいものです。